音楽にあわせて1行単位で自動的に歌詞を表示してくれるアプリケーション「プチリリ」の、2012年の年間ランキングが集計された。iOS版、Android版、iアプリ版、PC版の全てを対象に、同期歌詞が呼び出された回数をカウント。おそらく他の音楽系ランキングでは滅多にお目にかかれない"波乱"が起きているランキングを見ていきたい。
文:荒屋兵衛(TAINYANS)
1 | 365日のラブストーリー。 |
ソナーポケット |
2 | たとえ どんなに… |
西野 カナ |
3 | オレンジ |
GReeeeN |
4 | ヒカリへ |
miwa |
5 | 私たち |
西野カナ |
6 | 花火 |
三代目J Soul Brothers |
7 | GO FOR IT!! |
西野 カナ |
8 | GIVE ME FIVE! |
AKB48 |
9 | 女々しくて |
ゴールデンボンバー |
10 | ワイルド アット ハート |
嵐 |
200位までの詳しいランキングはこちら!→楽曲別ランキング
1 | 嵐 |
2 | 西野 カナ |
3 | EXILE |
4 | Mr.Children |
5 | GReeeeN |
6 | UVERworld |
7 | AKB48 |
8 | RADWIMPS |
9 | ONE OK ROCK |
10 | いきものがかり |
200位までの詳しいランキングはこちら!→アーティスト別ランキング
200位までの詳しいランキングはこちら!→アルバム別ランキング
◆ "これから歌われていく曲"を予測できる?
興味深いことに、曲別ランキングを見ると、ランクインしているのはその多くが2010年代の新譜である。プチリリのイメージとしては「どこでも使えるカラオケアプリ」だが、同時に「カラオケに行く前に練習するためのアプリ」でもある。そのため、どちらかといえば、歌詞を覚えた状態でカラオケのように使われた回数よりは、発売直後の新曲をカラオケで歌う準備として、歌詞を覚えたり、曲に合わせて練習するために使われた回数の方が多かったことが予想される。
通信カラオケのランキングであれば、上位の面子には比較的動きが少なく、長年にわたって多くの人に歌い継がれている「定番曲」の牙城を崩すのは容易ではない。しかし、プチリリの場合、そして月間ランキングや週間ランキングであれば尚更、「これから歌われていく曲」の方が上位に入りやすいはずだ。ゆえに、集計期間の音楽シーンを振り返るだけでなく、集計した時点からのトレンドを予測するということもできるかもしれない。
また、28位の「Be... / Ms.OOJA」、44位の「Shine / 家入レオ」といった期待の新人のドラマタイアップ曲は納得の強さだが、17位の「眠り姫 / SEKAI NO OWARI」、21位の「KiLLiNG ME / SiM」、27位の「Call me maybe / Carly Rae Jepsen」、31位の「カミサマネジマキ / Kemu」、74位の「エネの電脳紀行 / じん」 、86位の「Can Do / GRANRODEO」といった様々な界隈の最新ヒット曲が再生数を伸ばし、ビッグネーム達の間に名を連ねているというのが、CDの売上に依らないプチリリのランキングの面白さ。是非ともランキングの隅々まで目を通してほしい。そこにもし見慣れない名前があれば、それは未知のジャンルの人気曲であり、思わず口ずさみたくなるようなキャッチーな曲であるだろうから、一度試聴してみることで、音楽の新たな楽しさに気づくきっかけになるかもしれない。
◆「着うた系」では終わらなかった上位2組
曲別ランキングで栄えある1位に輝いたのは、ソナーポケットの代表曲「365日のラブストーリー。」。2011年10月19日の発売曲だが、昨年の年間ランキングでは2ヶ月程度の集計期間ながら2位にランクインしていた。曲別・アーティスト別の両方で2位を獲得した西野カナもそうだが、元来この2組はCDチャートよりも配信チャートの成績が良いため、以前であれば「着うた系」などと分類され、"本流"から派生した"分流"のような扱いを受けていたように感じる。
しかし、小型のPCとも言えるスマートフォンの普及や音楽の聴かれ方の変化などにより、最近では「CD」や「着うた」というようなパッケージの形はその存在意義が問われつつある。そして、人々の趣味や嗜好の多様化もあり、従来の分類が当てはまらないようなジャンルの曲も増えている。ゆえに、今後は、特定のパッケージやジャンルとリスナー層を結び付けて考えるよりも、音楽はもっと曖昧な情報として、全ての人に対してフラットに近い形で扱われるようになるのではないだろうか。
音楽業界は大きく変わりつつある、変わる必要がある、と言われ続けて数年。まだ次世代の形を想像するのは難しく、かつて高いセールスを記録していたアーティストも近年は苦しい戦いを強いられている。ただ、お茶の間には馴染みづらい「ビジュアル系」というジャンルの壁を爆破してブレイクしたゴールデンボンバーなども象徴的だが、ベテラン勢を抑えて上位にランクインした面々は、大きな転機を迎えている音楽業界で、特定の枠に留まらず、今後も幅広く人気を集めていくのではないかと期待できる。