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歌詞投稿コミュニティ「プチリリ」

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サスクハナ号の曳航V 天保山崎村

アーティスト:山本 正之  アルバム:サスクハナ号の曳航V 天保山崎村  作詞:山本正之  作曲:山本正之  発売年:2015  品番:BXCA-1022

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「ぼうや 空を見てごらん」 「うん あ お月さんだ まん丸だねえ」 「あの月の中に何が見えるかね」 「きまっとるじゃん うさぎじゃん」 「ほだねえ うさぎだねえ ほいでもお父さんにはねえ あそこに船が見えるだよ ずーっと 昔の船がねえ…」 三河安城の 私の実家の 仏間の仏壇の 引き出しの中に 七代前からの 当主たちがそれぞれに 残した五つの 不思議な伝え物 ここを初代として 喜右衛門の古文書 二代目 松道の 慶長小判 三代目 喜之松の ハ長調のハーモニカ 四代目 庄松の 月に浮かべた船の絵 五代目 樹一の 涙にじむ恋文 そして六代目が 私の父 利信 幼い頃から この五つの伝え物を 見ては想っては ひとり遊びをしてた 今年のお正月 この仏壇を開けて 蝋燭灯して 鈴鐘を鳴らしたその時 俄の地震で 灯明が倒れ落ち 元に戻そうとして ふっと気が付いた 揺れのせいで僅かに 引き出しがあいて 五つの伝え物が ちらと 目に入る 父が死んでから そういえば一度も この 引き出しを 開けていなかった 二十余年ぶりに 手にする五つ 懐かしい匂いと 親しい手ざわり しばらく感じて 元に戻せば 奥に何か白い 紙切れがある 八寸五寸の 厚手の和紙に 見慣れた父の 形よい筆跡 そこに書かれた 謎めいた言葉 山崎 西の切りの 和歌を読め 「山崎 西の切りの和歌… 西の切りって 墓地だよな ああ 釈等願 喜右衛門さんの墓の横に 和歌が彫ってあった! 古くて削れていて 読もうとも思わなかったけど もしかして この五つの伝え物に 関係があるのかも よし 行ってみよう 夜だからちょっと 恐いけど 今すぐ行ってみよう! 母の形見の 自転車飛ばして 唐津の踏切渡り ドンドンを背なに見て 山崎西の切り 墓地の前で留め置けば 真暗の墓場に 寒風ときらり星 「ひゅ~~ ぞくぞく ぶるぶる~」 懐中電灯を 点して歩き出せば 東南の奥の 山本家の区分地 北から順に 七基の墓石 一基目は名も知れぬ 遠き祖先の墓標 二基目の喜右衛門の その前に立拝み 明かりを横側の 仮名文字にあてれば 「あ~やっぱりむつかしいなあ」 あきらめず ひと文字ずつ 百七十年前の 和歌を読む 「よべやよべ よみのよがらに よひてよし こよやこよとて こよいもこよず」 「なんだろう 別に五つの伝え物とは 関係なさそうだし 恋の歌かなぁ… あっちへ行って酔っ払って こっちには戻って来てくれない… みたいな…」 お墓の前に立ち 懐中電灯を あてて和歌を詠む お正月の夜更け 誰かに見られたら 八つ墓村と思われる それでも繰り返し 和歌を詠む 呼べや呼べ 黄泉の夜がらに 酔いてよし 来よや来よとて 今宵も来よず 寒風一陣 背中を通る 震えて瞼を しばたけば 釈 等願 と 彫られた墓石の 後ろに何か 白いものが動く 「やばい、おれもとうとう 幽霊を見てしまうのか 絶対に存在しないと 思ってたんだけど、 出てるよなあ~」 それは次第に 形を膨らませ やがて人ようの 顔と胴に変わる 「き、喜右衛門さんですか?」 暫く静寂のあと 物の怪が声を出す わ~~~~ん 「え?」 わんわわ~~ん 「あれ?」 わぁ~~ん「コホン…、ピスか?」 わ~ん 「やっぱり…」 わ~ん 「あのさあ 久しぶりの対面の感動の前にぃ」 わ~ん 「その幽霊みたいな鳴きかた やめてほしいんですけど」 わ わん ワン! 「おお! ピスか? ピスなのか!?」 ワーン! 「おまえあれからどうしたんだ? 揚子江のほとりで お父さんと船に乗って 日本へ帰ったんだよなあ?」 ワンワン「え? 違うの?」 ワン 「だってお父さんが 長門の港で 桜がきれいだぁって」 ワンワン 「え、あれはフィクション?」ワン ワン ワンワンワン 「あれから大変だったの?」 ワンワワンワン~ 「ふんふん 日本に戻ったことは 戻ったけど」ワン 「そこが?」 ワンワンワンワワン~ 「天保時代だったの~」 ワンワーンワンワン 「それで お父さんが姿を消して おまえはひとり残された」 ワンワン 「天保時代にねえ」 ワン。!ワワンワンワワン 「ええ? いっしょにそこに来いってか?」 ワン! 「何しに?」 ワンワンワンワンワン 「五つの不思議」 ワン 「なるほど よめた! ヨシ行こう 天保の世へ」 ワンワン! 「で どうやって行くの?」 ワンワワン 「このお墓の中に入るの?」 ワンワン 「そうだった! 思えば行けるんだ、どこにでも! OK! ピス、いこう!」 ワーン! サスクハナ サスクハナ オレのDadの船がゆく サスクハナ サスクハナ ビリジアンの海を お墓の中は イメージとは違ってて 広くて爽やかで 光に満ちて ワンワンワンワ 「へえー 入る者の心が 明るければ~」 輝き応える アナザーワールド いくつもの夜空を 飛びゆきて やがて木造りの 屋敷の上に着く 月光る田畑 木々の葉音 寺の屋根 格子の窓には 行灯の明かり 二十畳程の 広間に人が集い 酒よ宴よ 村々の庄屋たちが 床の間の前の 主席に膝を置く 紋付の男の 盃を満たす 「喜右衛門どの! 本日はふんとにめでてえや ささ さかずき さかずき!」 天保十一年 一八四〇年 山崎村の名主 山本喜右衛門 安祥の城に 金五十両 上納 依って御免の 苗字帯刀 城に出向いて 城主より直々の 御酒をいただき 刀を賜り 山崎村の 基の者故に これより山本と 名乗る事よし 身の丈六尺 無類の大男 夜辺に出くわせば 天狗と身紛う しかしその気性 やさしく強く 水呑みの小作にも 吉を授ける ピスが尻尾を振って 軒先で吠えれば 木戸を引き開けて 喜右衛門が応える 「なんだあ シロ 帰って来たかや 心配したぞえ ほれ煮干しを食え」 伝えて聞いていた 代々山本の 家に飼われる 犬の名は シロ 「ピス おまえシロだったんだな」 ワン! 柴と紀州を かけた秀犬 「だけどピス、 私はここで どうしてればいいんですか」 ワン ワンワワン 「はあ、意識として存在する?」 ワン ワワンワン 「だから誰にも見えてないのか…」 ワン 「じゃあちょっと お風呂場で女中さんの…」 ワン! 「はーい」 天保十二年 山本喜右衛門 家督を嫡子の 松道に譲る 安祥城御免の 苗字帯刀の書き付け そっと仏壇の 引き出しに仕舞う サスクハナ サスクハナ オレのDadの船がゆく サスクハナ サスクハナ ビリジアンの海を 松の道と書いて 山本松道 文化八年生まれの 実直賢人 村を纏めて 米蔵も増やし みずから鍬を振り 汗を惜しまず 松道の嫡子 山本喜之松 喜びの松と書く 縁起よき好男子 森羅万象に 興味津々 帯に一竿 笛を挿しおく ざあざあしゅるる 波の音 百も二百もの 波の音 嘉永六年 喜之松十七才 千早振る魂 悶々と過ごす 山崎村に居て 家を守りさらばうか 身を捨て世界を 学ぶに賭けるか 父の松道 喜之松を憂いて 一起決心 道を拓かせる 「喜之松、この家の金を全部持って おんし 江戸へ行ってこい」 「おやじ殿…」 江戸でおまえの 星をつかめや 「おやじ殿 ありがてえなあ ほいでも金はいらんで」 「いいや 持ってけ どうせやがては おんしのもんだ わしはこの代々伝わる 慶長小判一枚 あやあいいで これを末裔まで残すで」 「おやじ殿 おらあ 江戸へ行くよ!」 「ああ それがいい、 おお そうだ シロをつれていけ 苦しい時 淋しい時 助けになるぞえ」 「うん!」 岡崎のお城の 下を進んで東海道 草鞋 手っ甲 脚絆の旅路 右に黒潮 左に富士山 松の枝越しに 嘉永の日の光り 九日十日と 駿河を過ぎて相模へ ちょうど大船の 鎌倉への分かれ道 三浦の海から 荷揚げしてきた漁師が 驚く話を 口々に広め来る 浦賀の沖に 見たこともない 煙突から蒸気吹く 黒い帆船 降りてくる男たちは 金や赤やの断髪 袖の細い羽織に 布製の兜笠 「なあ 漁師やんたち、 その人らは 危くねえだかえ?」 「いいや みんなやさしいずら 男どうしで手を握ったり 抱き合ったりしてのう」 「うわあ 会ってみてえなあ 話してみてえなあ」 「あかんあかん 言葉は ぜんぜん違うずら ゐゐ言っとるで」 喜之松本来 未知を知る欲に旺盛 心の底から 浦賀行きを望む 「おいシロ 行ってもいいよな 生きてえよなあ」 ワン 「よおし 行こう! 黒船を 見に行こう!」 ワーン サスクハナ サスクハナ オレのDadの船がゆく サスクハナ サスクハナ ビリジアンの海を 港 賑わって 飯屋あり 酒場あり 呼び込むかけ声 女の笑い声 三人四人で 組を作って練り歩く あれが噂の 黒船の乗手たちか 子供が手毬を 逃して追いかける それに気づいて 毬を掬って投げ戻す 一人の水平 髪は金色く眼は青く 毬の子供に微笑んで 片眼をつむる 喜之松 その子の 手を引いて歩き寄り 代わりにひと言「ありがとう」 水平わずかに 驚いても 臆せず 「You are welcome」 右手を差し出す 木の葉と水面が 雁と月ノ輪が 近づくように 出会ったように ふたりは阿吽に 乾神に誘なわれ 刹那の時間に 友と成される ワーン ワンワンワンワン ワーーン 「My name is john Harrison」 「ああ わかる わかるよ 知らん国の言葉なのに 意味がわかる」 ワーン 「そうか シロか」 ワーン 「シロが 橋渡しを してくれるんだな」 ワン


投稿者: machine
プチリリ再生回数:3





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